サルサ、メレンゲ、ルンバ

タンゴダンサー

2011年04月16日 23:09

何とかかわした。しかし、今度は大きな一軒家が流れてくる。
真っ二つに割れ、居間らしい部屋に、先祖の写真が飾ってある。その下は仏壇だ。
ぶつかった場合に備えてバランスのいいポジションを保ちながら、なおかつ、避けられるポイントへ移動を繰り返す。

一体、どこまで流されるのか?スーパー「マイヤ」の屋上に避難している人が見える。
このまま流されればマイヤの方向に向かっている。あそこまで流されたら飛び移ろうか。

流れが大分緩やかになった。今なら泳いで岸まで渡れそうだ。しかし、できるなら水には入りたくない。でも、もしかしたら、助かったかもしれない・・・

そう思ったら力が抜けた。流れ着いた一畳たたみの上に座って少し休んだ。座ってみたら両の足に全く力が入らなくなった。ふうーっと気が抜けた。どうやら挟まれたときに負傷したらしい。緊張が緩んだら急に痛み出した。これで泳げるか?小指が半分まで裂け、プラプラして血が流れ出してる。いつ切ったんだろう。これ、バイ菌入ったらヤバイな。
最後の力を振り絞ってとにかく、陸まで泳ごう。陸に着けばきっと助かる。あと、もう、ひと踏ん張りだ。一度は失ったと思った命を、もう一度始められる。
あとは、いかに被害を最小限に自分を救い出すか・・・・

よく考えろ!あるいはまだ助けを待つか。一体いつまで?
ん?・・・
山を下りてくる人が見える。じっと監察する。もしや、気づいて助けに来てくれたか。水際まで下りてきて何かを探している。どうやって助け出すか考えているのか?

いや、違う。本当に何かを探してるんだ。

「あのー、すいませーん。」緊急事態だ。すいませーんじゃないだろ。もっと強気でいけ。しかし、気分を損ねられてもいけない。「誰か、助けに来てもらえるように呼んで頂けませんかー!」

聞こえないのか、無視してるのか。反応しない。もう一度呼びかける。
反応しない。
「すいませーん。」
これは完全に無視だな。

流れが完全に止まった。今しかない。決断の時。

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